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株式会社山立水産運輸
代表取締役 立川 明彦氏

世界初となる『スカニア活魚運搬車』を作り上げた株式会社山立水産運輸・立川社長。
鮮魚仲買人としての長年の経験を活かし、
スカニアボディに合わせた水槽部分をフルオーダーで作り業界からも注目を集める。
自身もスカニア車両を乗りこなす立川社長にスカニア車両の魅力を伺った。

-ご祖父様の代から続く鮮魚仲買会社〈山立〉を継いで3代目ですね

祖父は私が幼少の頃に亡くなったので様子は殆ど覚えていないのですが、当時は自転車で売りに行っている時代でした。地元で鮮魚を買って築地(東京都中央区)まで売りに行っていたそうです。30~40キロの荷物を運んでいたと聞きました。昭和48年に父の代で有限会社山立商店となり、私は父のサポートをしながら、平成7年(1995年)に株式会社山立水産運輸を立ち上げました。32歳の時です。そして36歳で父の会社も引き継ぎました。

-なぜ、運送の仕事を始めたのですか?

市場などから買った魚の配送は運送会社にお願いをしていたんです。でも情報が漏れちゃうんですよね。同じ運送屋さんを使っているとドライバーを通じて翌日にはどこに何が届くかが知られてしまう。利益を出そうにも潰されてしまうということも多々ありました。なので自分で運んだ方がいいと思ったんです。一匹狼でやっていれば情報は漏れないのでね。20歳頃からですね。仲買の仕事をしながら、夜は自分の車で東京まで運んでいました。当時、仲買人の業界で運送もやってる人間はいなかったですね。それでお金貯めて24歳で結婚しましたからね。周りとは少し違っていたかもしれませんね。

-当時、活魚運搬車はどのくらいのニーズがあったのですか?

今から30年ほど前、関東では活魚運搬車を持ってる会社は殆どなかったですね。横須賀辺りの運送会社でも後ろに容器を積んで、酸素瓶で魚を生かして運んでいました。輸送中に水は溢れて、道路は水浸し。築地に着いたら容器の水が半分しか残ってなかった時もありました。
一方で輸送技術は関西の方が進んでいました。山が高い分、天然魚が取れない。養殖魚しかないという状況ですから。関東ではまだ酸素瓶で魚を生かしていた時代に、関西は酸素の状態を機械で管理していました。もちろん水も溢れないしね。私が初めて購入した活魚運搬車は関西の方から買ったんです。関東では当時、活魚運搬車を持ってるのはウチだけだったんじゃないかな。

-活魚運搬車を購入したのが大きな転機となったのでしょうか?

そうですね。27歳の頃に「新車で作って1年しか経ってない水槽付き1300万円程の車両を650万円で買ってくれないか」と相談がきたんです。4t車が250万円程で買えた時代ですから、かなり高額だったんですが購入しました。大阪で鮮魚を扱う荷主さんを紹介して貰うという約束付きでね。
当時、横須賀ではウマズラハギが多くあがっていましたが、大阪ではハゲって呼ばれていて高級魚だったんです。活魚運搬車がない頃は、酸素瓶を7本積んでその魚を運んでいましたが、酸素だけで生かしているため目が赤くなるなど良い状態で関西まで届けることが難しかった。それが、新しく購入した活魚運搬車では魚が泳いでいる状態のまま運べるようになったんです。鮮度も保てて、関西で高値で売れるようになり、1年でその車両の元が取れました。その2年後には更にもう1台活魚運搬車を作り、地元である三崎(神奈川県三浦市)の養殖業者からの依頼も増えましたね。それが大きな転機だったように感じます。平成7年1月16日に株式会社山立水産運輸がスタートしました。平成9年頃からは韓国や中国へも行くようになり、更に仕事の幅が広がりましたね。

-会社設立29年で保有台数は50台に。魚介類を扱う上で大切にしていることはありますか?

現在ドライバーは34名いますが、全員が活魚運搬車を扱えるわけではないんです。なんでもできるのは6人かな。活魚の運搬はちょっと気を抜くと魚が全滅してしまうので繊細な仕事なんです。状態が悪いと泡が出てくるし、その状況を判断できる必要がある。実は、うちの車両は敢えて各水槽にカメラを入れてないんです。活魚って手積みと比べると積み込みも楽だし、降ろすのもそんなに時間かからない。だからこそ魚の管理に集中する事ができるんです。運転席からモニターだけを見て大丈夫って言っていたら大間違いを起こします。車を降り、魚の状態を自分の目で見て判断する必要があるんです。みんなができる仕事ではないということなんですよね。活魚しかやらないというドライバーもいますよ。私の鮮魚仲買人の経験からも、ここはしっかり伝えていきたいと思っています。

-スカニア車両を導入したのは2019年からですね。きっかけは?

輸入車両を何台か使っていたのですが、入替を考えている頃でした。たまたまインターネットでスカニア車両を見つけて問い合わせをしたんです。すると自分のことを知っている人が何人もいて。詳しく聞いてみると、”関東で活魚運搬車を扱っている人”として関西エリアで有名だったようで(笑)活魚運搬車を依頼してみることにしたんです。
ただ、最初の1台はかなり時間がかかりましたね。スカニアにとって日本初の架装車両という点で様々な制約がありました。水槽の架装はスカニア車の規格に合わない。根本的な車両の作りが違う。ましてや水槽を乗せた車両は本国でも前例が無かったので結構大変でしたね。私が昔からお世話になっている水槽メーカー「株式会社キョーワ」さんが、この車両でも大丈夫とGOサインを出すまでにも半年程かかりましたから。スカニアのリジッドトラック「R410」をベースに、設計自体にも半年以上をかけフルオーダーで作ってもらい、実際に納車された時には1年以上が経ってましたね。

-実際に運用してみていかがですか?

スカニア車両は現在、4台保有していますが、乗り心地が他の車両とは全く違いますね。私も1台乗っていますが車内の居住性も含めて全然別物だと感じます。実際にRシリーズに乗っているドライバーからも疲れ方が全然違うという声が入っていますよ。ブレーキの感覚も非常にいいようです。あと、ドアを閉める音もスカニアは独特なんですよね、高級乗用車のようにフワッと閉まる。燃費計算においても大きく結果が出ているので「スカニアに乗りたい」という声が多いのも分かりますね。
また、全国にディーラーがあるので長距離輸送でも安心しています。韓国など海外にも拠点があるので現地でのサポートもとても助かっています。
今後のビジネス拡大のためスカニアを数台発注済みです。

-仕事に対するこだわりを教えてください

私が仕事をしていく上で大切にしているのは『執着心』なんです。鮮魚をいかに良い状態で届けるか。そのためには魚の見極め方はもちろんですが、車両の機能や作り方、運搬方法、そして仕事の進め方自体が重要なんです。だからこそ初めての仕事はまず最初に自分で運転しますよ。その仕事を受ける価値があるかどうかを自分で見極める必要があります。実際に運転してみると、その動線には無理や無駄があったり、ドライバーの負担が多過ぎたりと、様々な事が見えてきます。自分でハンドルを握ってみないと分からないですからね。
どんな仕事に対しても執着するからこそ、探求が生まれ、より良い仕事に繋がる。自分の出来ることに『執着心』を持って、納得したうえで仕事を進めていきたいと考えています。

インタビュー・記事 / 鳥越雅子
写真 / 安岡花野子


※本記事掲載車両に装着されている補助灯は、港湾内等での作業時のみに使用されているものとなります。

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