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まなびのコラム

トラック運送事業者の社会的責任(CSR)について!
具体的な取り組みも

昨今、企業においては社会的責任(CSR)の枠組みのもとで、説明責任を果たし、コンプライアンスを遵守し、持続可能な社会の構築に寄与することが求められています。

この動きはトラック運送業界においても同様で、安全確保や環境保全への取り組みなど、CSR経営を積極的に進める必要があります。

今回はトラック運送事業者の社会的責任(CSR)について、その詳細や具体的な取り組みについてみていきます。

企業の社会的責任(CSR)とは?

CSR(Corporate Social Responsibility)とは企業が事業活動を行う上で環境保護、公正な労働慣行、倫理的なビジネス行動、コミュニティへの貢献など、社会的、経済的、環境的な側面から責任を持った行動を求める考え方を指します。

企業が単に自社の利益を追求するだけでなく、ステークホルダー(株主、従業員、顧客、地域社会など)の利益を考慮しながら持続可能な方法でのビジネス運営を求めるものです。

CSRが普及した背景には、過去の企業の不祥事、グローバル化、環境問題の深刻化などがあります。多くの企業が経済的利益だけでなく、社会的、環境的な影響をも考慮する必要があるとの認識が高まったためです。

トラック運送事業者の社会的責任

それではトラック業界、トラック運送事業者にはどのような社会的責任が求められるのでしょうか。安全対策、環境への配慮、社会的ルールの厳守の3つの観点からみていきます。

安全対策

事故のリスクを最小限に抑えるためには、ドライバーの安全運転の徹底と、管理者による適切な運行管理、整備管理、労務管理が不可欠です。

具体的には、ドライバーへの安全運転教育や訓練の実施、交通事故防止を目的とした安全運転の6項目(飲酒運転の根絶、制限速度の厳守、過積載防止、過労運転の撲滅、社内安全教育の徹底、運転マナーの向上)の推進が求められます。

さらに、先進安全自動車(ASV)や関連機器の導入も安全対策の一環として重要です。ドライブレコーダー、アルコールチェッカー、追突被害軽減ブレーキシステム、後方視界情報提供装置の使用は、事故防止に直結し、安全運転につながります。

適切な管理と教育、ASV、関連機器の導入を行うことで、トラック運送事業者は安全な運輸サービスを実現し、社会的責任を果たすことができます。

環境への配慮

自動車NOx・PM法や各地の環境条例に対応した新基準車両への切り替えは進んでいますが、さらに省エネ運転や燃費管理の徹底、適切な車両仕様の利用、そして定期的な保守整備が求められています。

それに加えて、実車率や積載率を高める工夫やエコドライブの推進も重要です。具体的なエコドライブの措置には、アイドリングストップ、急発進や急加速を避ける、定速運転、エンジンブレーキの使用、速度抑制などが含まれます。

また、燃費管理にはデジタルタコグラフ(デジタコ)を活用することで、車速の変動、エンジン回転、アイドリング時間の管理が可能になります。

それらは、燃料消費の効率化だけでなく、CO2排出量の削減にも貢献します。さらに、CNG(圧縮天然ガス)車やハイブリッド車の導入、車体の軽量化や装備の簡素化も環境への負荷を減らすための手段です。

社会的ルールの厳守

労働基準法の遵守、社会保険への加入、公正な取引の実践など社会的ルールの厳守も不可欠です。

特に労働関連の違反は、企業だけでなく業界全体のイメージに影響を与えるため、適切な労務管理が求められます。

また、運送業界では元請けと下請けの取引が一般的であり、これに関連する法的な規制も厳格化されています。公正な取引を推進するため、「トラック運送業における下請・荷主適正取引推進ガイドライン」が定められ、元請けによる下請けの不当な扱いを防ぐ措置が講じられています。

これは、業界内での健全な競争と公平な商慣行を促進し、すべての事業者が公平に取引できる環境を保証するためのものです。

事業者はそれに従い、安全、公正、かつ法規制を遵守することで、業界の信頼性を高め、長期的に安定した経営を目指す必要があります。

第三者機関から認定・認証について

コンプライアンス経営の一環として、第三者機関からの認定や認証を受ける企業が増えています。これは、社内体制や仕組みを評価する基準に基づいたもので、客観的な評価を通じて企業価値を向上させることが可能です。特にトラック運送業者にとって、認定・認証の取得は安全と環境への配慮において重要な意味を持ちます。

例えば、Gマーク認定はトラック運送業者が安全性の高さを示すために取得するもので、事業所が安全性優良事業所として認定されることで、荷主との取引において信頼を得ることができます。

また、エコドライブやISO14001などの環境管理システムの認証は、環境負荷の低減に対する企業の取り組みを証明するものです。それらの認証を通じて、企業は環境への責任を果たし、社会からの評価を得ることができます。

それに加え、プライバシーマークやISO9001など、個人情報の適切な取扱いや品質管理の確立も企業にとって必要不可欠です。それらの認証は、サービス品質保証を示す上で、効果的です。

トラック運送業界における社会的責任について

本記事では、トラック業界および、トラック運送事業者の社会的責任(CSR)と具体的な取り組みに焦点を当てて解説しました。安全対策や環境への配慮、社会的ルールの厳守がトラック運送事業者には求められます。

具体的には安全運転の徹底、事故防止技術の導入、排出ガス削減、エコドライブの推進、労働基準法の遵守などが挙げられます。

また、Gマーク認定やISO認証など、第三者認証を取得することで、企業価値の向上と客観的な評価の獲得が可能です。それらの取り組みを通じて、持続可能な事業運営を実現し、社会的な信頼を築くことができます。

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