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株式会社enstem 代表取締役 山本 寛大氏

【株式会社enstem】

住  所:東京都中央区入船2丁目3-9 平成新富町ビル3F
設  立:2019年6月5日
事業内容:生体データ事業・Webマーケティング事業


夢は“お節介おじさん”になること 〜世界中のご縁を繋ぐ架け橋に〜

専用のスマートウォッチとスマートフォンアプリを使って体の状態を可視化できるシステム「Nobi」を開発・展開している株式会社enstem。 
平均寿命、健康寿命。そして、“パフォーマンス寿命”というのがあると思うんです。
その人が思いのまま長く活躍し続けることができるのが理想的な姿なんじゃないかな、これは僕の考えなんですけどね・・・。
屈託のない笑顔で周囲をあっという間に引き込んでいく株式会社enstem代表・山本寛大氏。
 『その人らしく楽しく暮らすこと』が、良いパフォーマンスをできている状態なのだとすると、
“パフォーマンス寿命”が伸びることで、より良い生き方に繋がるのではないか・・・。
設立3年の若い会社は《ポテンシャルをパフォーマンスへ》を掲げ、次々と新しいアイデアを生み出していく。「全ての人が持つポテンシャル(潜在能力)を、その人が思い描く最高のパフォーマンス(表現)へと生かす手助けができれば、世界を変えることができるのではないか」人の可能性を視覚化し、更なる発展を描く山本社長にお話を伺った。

//History//

浅草生まれ、シリコンバレー育ち。

 父の仕事の都合で、中学から北カリフォルニア・シリコンバレーで過ごしました。12歳が見たアメリカは訳が分からなかったですよ。いきなり言葉の壁があるし、学校には40カ国程の人がいるし、どうしよう・・・ひとまず顔色伺うしかない(汗)という感じでしたね。適当に返事したら合ってなかったとか、間違ったこと言ったかなとかね。人生において大きな刺激になりましたし、私の在り方というか根幹の部分が培われたと思っています。
 小学4年生の時に始めた野球も、アメリカで本格的に向き合うようになりました。野球に熱中せざるを得なかったと言った方が正しいかな。アメリカって、いい意味でドラスティックな社会なんです。「君は何者なんだ!」って言われる。周りの外国人はトップの大学に行って一気に成り上がるぞというモチベーションで来ているので、そもそも勝負の扉が違うと感じました。当時はイチローや松井秀喜がメジャーで活躍していた時代。ならば私も野球の波に乗ろうと考えたんです。野球のYouTubeを見て研究して、人よりかなり練習しましたね。その結果「野球がうまい山本くんだ」って仲間に溶け込めるようになりました。寂しくならないようにやっていたと言うのが野球を頑張った理由かもしれないですね。単純に好きだけではない思いでやっていました。
 16歳の時、アメリカのジュニアオリンピックで準優勝できるレベルのチームに在籍していました。メンバーには現役で活躍しているメジャーリーガーもいます。私は子供の頃から身長は高かったけど、それでもアメリカだと低い方でしたね。選抜チームのピッチャーの中では一番小さかった。当時、私もインディアンズとロイヤルズからスカウトが来たんですけど、強いチームで投げていたから目をつけて貰えたんですよね。
 野球をきっかけに多くを学びました。友達も増えたし、帰国後に進学した大学でも野球を続けていたんですけど、そこでも学べることが多くあったと感じます。物事に取り組む時、常に目の前にいる人と何ができるかと考えていますが、これはアメリカでの経験からきているのかなと感じます。

-大学卒業後、googleを経て起業されました。起業の意思はいつ頃から?

 子供の頃、祖父の会社に遊びに行っては従業員の方に可愛がって貰いました。祖父は曽祖父の代から続いていた和菓子屋を一旦閉めたのち広告の会社を起業しているんです。浅草サンバカーニバルなどの審査員やソウルオリンピックを手がけるなど街の仕切り屋でしたね。また祖母は銀座で小料理屋を一昨年まで経営していましたし、中華料理店を経営する親戚もいて、子供の頃から商売の舞台裏を見るのが好きだったんです。商売とはこういうものだ、お客様とはこう話すんだというのをずっと見てきたので、自分も将来は起業しようと決めていました。
 その前に社会での経験を積みたいとGoogleに入社。ここで私は「人が困った時に助けられるか」「ポジティブなフィードバックができるか」というコミュニケーションに於いての基盤を学んだ気がします。
 26歳でGoogleを退社し、AI(人工知能)を開発する企業で仕事をしました。OCR(紙面や画像ファイルの文字を自動でデジタルデータに変換する機能)などの仕組みを作っている会社で、当時の社長が学生時代の頃から知り合いだったので1年ほど手伝いをさせて貰いました。この会社は7割が外国人で、博士号を持つような優秀な人ばかりだったので大きな刺激を受けましたね。ここでの経験で、体の波形データとAIは相性がいいことに気が付いたんです。この波形を使って仕事にできないかと考えましたが、起業したタイミングではアイデアは全くありませんでした。仲間と試行錯誤しながら、生体データとAIの相性が良いという仮説が正しいのであれば、海外で試してみようということになり、ベトナムにあるサッカー元代表選手が作った財団で、選手の生体データも活かした実験をさせて貰ったんです。ここで手応えを感じ仕事として展開できると確信しましたね。


記事中に登場するベトナムのサッカー選手と山本社長

-2019年6月5日に株式会社enstemを設立されました。会社名の由来は?

 30歳で起業したいと考えていたんですが、転職と同時に27歳での起業となりました。Googleを退社する直前に紹介されたとある企業の社長が「Googleを辞めるならマーケティングを任せたい」と声をかけてくださったんです。その方も創業者だったので、私への応援も込めて大きな仕事を任せてくれたんだと思います。急遽、合同会社を作ることになり、その後2019年6月5日に28歳で株式会社enstemを設立しました。
 いずれは世界で仕事しようと考えていたので会社名は英語にしようと決めていたんです。ご縁の“en”と木の幹“stem”を組み合わせて“enstem”にしました。子供の頃から曽祖母にご縁を大切にしなさい、人を大事にしなさいと言われて育ちました。なので会社名に“縁”という言葉は入れたかったんです。そして、経験を重ねていくなかで、大きな木のように葉が茂りご縁が広がって、それが形になっていったらハッピーだよねというイメージに繋がったんです。私は周りの友人や先輩方にとても恵まれていると思います。私が新しい事業展開などを話すと「じゃあ、山本君こういうのはどうかね?」と更に提案やサポートをしてくださる。おかげさまで少しづつですが仕事も広がってきていて、やりたいことを形にできていると実感しています。ご縁を大切にしたいですね。

-ウェアラブル端末「Nobi」について教えてください

 専用スマートウォッチとスマートフォンアプリを使って、そこから取得できる生体データと、日々の簡易的なアンケートから得られる主観のデータを分析してコンディションを数値化し、体の状態を可視化できるサービスです。
「Nobi」というネーミングは『伸び伸びみんなが健やかに生きられるように』との想いを込めました。
 B to Bでスタートしたのは2020年ですが、その前から構想はあってフィリピンで試験的に展開しました。過酷な仕事環境ではミスが発生することも容易に想定できます。何が重なるとミスに繋がるのか、体がどんな状態になったら休憩時間を置いた方が良いのかを判断できると、もっと効率的に従業員のシフトが組めるのではと考えました。「Nobi」をつけるとストレス状態の可視化ができるし、ストレスを和らげるためのソリューションを睡眠も含めて提案できる。同じ環境でも人によって傾向が違うとか、別の事業環境でも応用できるなど、このシステムに大きな可能性を感じましたね。コールセンターや建設業、運送業でも事業展開を考え試験した中で一番反響が大きかったのが運送業でした。

-実際にはどのようなフィードバックがありましたか?

 興味深かったのは、従業員60人程の産業廃棄会社様からのフィードバックです。社員の健康管理などに積極的に取り組んでいる会社でした。CSRや、従業員の働きやすさの追求、事故率が下がる事によるコストダウンなど経営者目線で「Nobi」を具体的に評価してくださったんです。
 また、従業員目線で言うと、自分を振り返るきっかけにもなっているようなんです。業務とは直接的な繋がりはないんですが「体重が減った」とのコメントがあって、自分の状態を理解して振り返る、体の情報にも繋がるんだなと改めて感じました。
 また、多く言われるのが「共通言語が増えた」と言うことです。いろんな世代の人が働いている中で「私は今日こうだったんだよね」「この状態はどうなの?」というように、従業員同士の共通言語になっている。声かけのきっかけにもなっているとフィードバックを頂きました。声をかけるタイミングって簡単ではないですよね。顔色悪いねって言いづらいし、調子が悪くても大丈夫?って聞かれたら「大丈夫です!」って答えがちじゃないですか?でも「データではこうなっているけど、調子はどう?」といった問いかけの根拠にはなります。データを元に少し休み時間を増やそうか、シフトをずらしてあげようか、など、前もって対処もできる。もしかしたら起きていたかもしれない事故等を防げるかもしれない。これは大きな価値があると感じますね。
 「Nobi」とソリューションによって全てがマップ化されるので、“ヒヤリハット地点”を特定できるし、同じ道路を走っても危険と感じる人とそうでない人がいるので、そういう傾向を理解すると全体的な意識にも繋がります。意識一つでその後の事態は大きく変わってくる。情報を取り入れることで防げるかもしれない。リスクを減らすことで働く時間地域も含め、いわゆる生活を守るという視点でも使えるんじゃないかなと感じます。自分の強みや弱みを可視化できる事に意味があるし、弱みを組織としてどう補填していくのか、これはどの業界もスポーツも同じかなと。可視化でき、誰もが共通に認識できる客観的な情報があれば、更なる策にも繋がりますよね。1人でも多くのドライバーさんに使ってもらえたら嬉しいですね。

//Dream//

-夢をお聞かせください

私は『お節介おじさん』になるのが夢なんです。それを世界でやりたいと考えています。私が歳を重ねた時に、後輩たちがこんなことやりたいんですって言ってきたら「なるほどいいアイデアだね。今からインドネシア、フィリピン、スイスの知り合いに電話するから、それをブラジルでやりなさい!」って、世界中の友人を繋いでサポートしてあげたいんです。
 私の周りにいた下町のおじさんって面倒くさい人ばかりだったんですよね。自然に巻き込まれて、勝手に怒られたりして。だけど振り返ってみると案外ありがたかったなって思うことがありますよね。よくあれだけ面倒見てくれたなって後から分かることがたくさんあります。これを下町区域だけじゃなくて、世界中で困っている人がいたら助けてあげたいって思うんです。そのためにも私自身がもっと力をつけていきたい。「うるせーな、あのジジイっ」て言われたりしてね。それが夢ですね。
 誰に相談するかで出会う人も変わってきます。仕事も人生も、純粋に楽しいことをしていきたい。みんなが楽しかったら私も嬉しいし(笑)。最高のパフォーマンスに繋がるように、ワクワクと面白がって取り組み、『最高のお節介おじさん』になります!

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