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熊本交通運輸株式会社
代表取締役社長 住永 金司 氏

創 業:昭和45年6月
設 立:昭和47年4月
本 社:熊本県上益城郡益城町平田2240-1
事業内容:一般貨物運送業・ホテル業
従業員数:800名(グループ全体)
所有台数:約600台(グループ全体)
営業所:11カ所

「運ぶ」だけでは終わらない。

熊本県上益城郡益城町に本社を構え、全国に青果物や生花・建築資材等の運送、倉庫業に力を入れて取り組まれている熊本交通運輸株式会社。
お客様のニーズに答え、自社整備工場では荷主様の積荷に合わせた車両の架装と提案を行っている。
今年4月には、地元熊本や九州エリアでの数々な社会貢献活動の功績が認められ、旭日双光章を受章された代表取締役住永金司氏にお話を伺った。

憧れのトラックドライバーへの転身

―昭和47年4月に会社を設立されておりますが、設立を志した経緯について教えてください。

小学校低学年の時から、トラックに乗り仕事をすることが夢でした。営林署(※1)から木材を搬送する6tトラックを見て育ち、これに「将来乗るぞ!」と思いながら成長しました。
※1 営林署:かつてあった農林水産省の下部管理機構。国有林野などの造林・伐採・治山保護などを行なう。

―それでは、学校卒業後すぐにトラックドライバーになられたのでしょうか。

それがですね、私は6人兄弟の末っ子なのですが、母が経営していた食料品を扱う住永商店を継ぐことになりまして。母の意向で高校卒業し魚屋で2年間修業した後に、住永商店の経営者になりました。やはりトラックに乗りたかったものですから、義姉にお店を任せて4t中古の平ボディを購入し、運送の仕事を始めました。

―その頃は何を運ばれていたのでしょうか?

球磨郡産のヒノキ材を積んで関東や関西に運び、長野産のリンゴや群馬産のキャベツを積んで帰る仕事を5年しましたね。
当時は起業しようと思っていても運送免許の認可が中々おりない時代でしたので、譲渡譲受という形で運送業の免許を取得しました。保有していた2台のトラックと譲り受けたトラックを合わせて計6台の平ボディで、熊本交通運輸をスタートしました。

創業時から変わらない、1業種1社への配送

―青果物や建築資材など、配送している品目が多岐にわたるようですが。

そうですね。青果物や建築資材の他は生花、新聞社や印刷会社へドラム缶に入ったインクの保管・配送から、インクを印刷機に注入する作業まで行っています。ただ運ぶだけというのはあまり行ってないですね。

―配送だけではないのですね。インクを注入することになったきっかけとは?

当社が熊本の新聞社に新しく印刷機を納入したのがきっかけです。荷主様から「あの機械にインクの注入が出来なくてユーザー様が困っているから、インクを入れるまで熊交さんで行って貰えないだろうか」と相談され、それ以降インクの注入までうちが引き受けるようになりました。

―そうすると、建築資材も同様に保管から資材の組み立てまでなさっているのでしょうか。

そうです。配送する際は、当社のセンターである程度組み立てしたものを設置するまで行っています。あと、当社では創業当初より1業種1社と決めて配送を行っています。
このメーカーと取引すると決めたらそこ1社だけ。お客様にも同業者との兼ね合いがありますからね。ただ中には、お客様の方から同業者の荷物を運んでほしいというご要望もあるので、その時々で臨機応変に対応しています。

トマトは5度、生花は17度設定で保管・配送

―HPを拝見したところ、昨年・今年と自社倉庫を新設されておりますよね。現在物流施設の増強に一番力を入れている印象を受けました。

そうです。物流は運ぶだけという概念を捨てて、お客様の大切な商品を適切な温度で管理・保管まで行うことに注力しています。
昨年は嘉島物流センター(第2定温倉庫)、今年は5月宇土市に第3定温倉庫を作りました。
当社の第2・第3定温倉庫はお客様からご要望があって作った専用倉庫で、テレビなどの保護フィルムを25度±2度に温度設定し両倉庫とも同じ商品を保管しています。

―今後も倉庫を建てられるご予定があるのでしょうか。

来年は福岡県の久山町に新たな物流センターを建設予定です。今自社の物流センターは合わせて2万2千坪ありますかね。

―フィルムの他にも専用の倉庫があるのでしょうか。

物流センター内には、青果物倉庫や生花専用の倉庫があります。生花専用の倉庫は、集荷した生花を1日でも長持ちさせるために、17度設定で商品を保管しています。これは当社が考えて作った倉庫ですね。そこで集荷された生花は同温度設定の冷凍ウィングで、全国の花市場に運んでいますよ。
また、熊本県八代市の特産品であるトマトは5度設定で倉庫に保管し、同温度に設定した冷凍ウィングで運んでいますね。トマトは常温で運ぶと関東に到着するころには完熟になる。トマトが完熟にならないように運ぶにはどうしたらいいか模索し、うちは昭和50年代から5度設定で運んでいます。

お客様のニーズに合わせた提案、架装する車両

―現在連結トラックを保有されておりますね。HPには大手建設資材メーカーから出発式をする様子が掲載されておりますが、そのメーカーの工場間の配送だけに使用されているのでしょうか。

そうです。昨年5月よりメーカーの熊本工場から埼玉の久喜工場までサッシや住宅建材を運んでいます。普通のトラックより1.7倍(荷物が)入っているけれども、エンジンの燃費は変わらず、運賃をこれだけ下げて走れますよと、お客様にご提案し運行を開始しました。2台のトラックに5名のドライバーが携わっています。今は4台ですが、今後9両増車し、今度は北陸の方に運ぶ為に使用する予定です。

―保有している車両の形状はアルミウィングや冷凍ウィングが多いのでしょうか。

グループ会社合わせて約600台保有している車両のうち、ほとんどがそうです。中でも長距離運送で使用しているのは25台、あとは主に熊本県内や九州間を走っています。平ボディは20台くらいですね。また、お客様のニーズに合わせて、本社の敷地内にある架装工場でオリジナル仕様の車両を手掛けています。

―他にも珍しい車両を保有されておりますよね。HPのインフォメーションに掲載されていた、第35回熊交グループの夏祭りの記事を拝見しました。ステージとしてステージカーが使用されていましたが、これは自社で架装されたオリジナル車両でしょうか。

そうです。今のステージカーの元祖は、昭和の時代に夏祭りの設営が大変だったので作った車両です。当時は祭りの時期になると、丸太を荒縄で組んで足場を作成していたので、設営にかなりの時間がかかっていました。
そこで、トラックのボディを改良したステージカーを作れば、設営時間の短縮が出来るのではないかと考えて、当社の架装工場で試行錯誤の上作りました。
今でも2台ステージカーがあり、電源車と照明車も各2台保有しているので、セットで会場に持って行けば設営が出来るようになっています。

水害で被災した地元熊本のために

―トラックランドから購入した7tクレーン付も、他の車両と同様に架装して使用されるのでしょうか。

そうです。今まさに床板に鉄板を張り、内フックを取り付けている最中ですよ。ブロック状のコンクリートを運ぶために購入しました。

―もしかして、2020年7月に球磨川の氾濫で被災したエリアを復旧するための資材でしょうか。

そうです。これから3ヶ月から1年くらいはその運搬で使用する予定です。
当社では、手伝いに行きたいという若手社員を有志で募り、9月の連休まで土日毎週30人ずつ分かれてワゴン車等で被災地に行き、泥の撤去や片付けなどのボランティアを行いました。合計で330人くらい行きましたね。

―グループ会社でレッカー事業も行っておりますね。その水害でもレッカー車が出動されたのでしょうか。

その時は、大型小型合わせて30台出動しました。人吉市に行きラフタークレーンとレッカー車とで、被災し道路に転んでいる乗用車やトラックを約90台運びました。

新型コロナウイルス対策

―受付でビニールシートを張っているのを見かけました。他にも行っている対策について教えてください。

うちは取引先で感染者が出た場合、該当社員をすぐにPCR検査を受けさせるようにしています。
もし他の支店で出た場合は、荷主様に現状を説明させていていただき、次亜塩素酸で車内外をすべて消毒している風景を動画撮影し、荷主様にはその動画を送ります。濃厚接触者は総合病院で診察を受けさせて、全員陰性が証明されれば、翌日には通常業務を行える体制を整えています。
現在本社では、朝と晩に紫外線で60分かけて室内を殺菌しています。また、事務所の真ん中にビニールシートを張り2つに仕切っていますので、もし万が一感染しても全業務が止まることはないですからね。お客様が困らないように取り組んでいます。

やってみせ、言い聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば

―毎年、ドライバー対象の安全大会、全社員研修会を行われていますよね。いつ頃から行われているのでしょうか。

うちは10台15台しかなかった創業10年目からずっと研修会をやってきました。

―今年の安全大会や研修会はどうされたのでしょうか。

新型コロナウイルスの関係で集まって出来ないので、研修用DVDを作成し、営業所の中でも小集団単位で受けさせることにしました。

―研修用DVDはどのような内容なのでしょうか。

夜間のハイビームとロービームの見え方の違いや左折時の巻き込みとか、実際に車を走らせた映像を使用し、皆が興味を持てる内容にしています。映像で見せてやると、「あー。本当これは見えんばいな」解ってもらえる。研修内容を脳に記憶させることが大事ですね。

―研修会ではドライバーの無事故表彰を行っているそうですね。

7年以上無事故者には、15万円分のガソリン券を渡しています。また、うちには安全指導をする専任が1人いまして、抜き打ちで営業所を回ったり、ドラレコの映像をみています。1回目はただ指摘のみ、2回目は処罰をするとかですね。そして3ヶ月後5か月後、営業所に抜き打ちで行き改善しているか確認をしています。
ドライバーからの夜間の電話の対応は守衛さんが行っていますが、不在の時は私が対応しています。急なトラブルが起こったとしても、上がしっかり対応してくれる。そういうことで社員が安心して働ける。それはオーナーの務めであり会社の務め。やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじと言いますからね。
加藤清正公(※2)のように現場に入って一緒に仕事をする。上に立つものはこうでなくてはならんと(笑)
※2 加藤清正:熊本藩の初代藩主。熊本の治水工事に携わり、自身も現場に入り鍬を振るい田畑の開拓に尽力した。

現在の課題と展望

―運送業界では運転手不足が課題だと言われておりますが、現在影響はありますか。

今のところ当社には影響はありませんがこれをどう乗り切っていくか、2025年には運転手も一般的な会社員と同じ労働時間になる。これをどう乗り切るかというのが一番の課題ですね。

九州の運送業者は、13時間以内に九州―関東間に荷物を運ぶことに頭を悩ませているという。陸路だけの13時間では、滋賀県の栗東辺りまでしか配達が出来ないからだ。
熊本交通運輸株式会社では、その現状を打破するために一昨年から九州農政局や国土交通省、関東の青果市場等と連携して運送体系をどうするか、コンテナかトラックか、はたまたフェリー運航が良いのかといった実証実験を行っている。
「熊本県だけでも秋冬野菜の売上4割強が関東。そこに特化した輸送体系を作らないと、関東の消費者が九州の野菜を食べられなくなってしまう。九州の農家が関東に出荷出来なくなってしまう。それを変えていかなくてはならない」と住永氏。
住永氏は自身の畑でさつま芋を作り、学校の課外授業として子供たちに芋ほり体験をさせているという。
「今の子供達は芋がどうなっているのか知らない子が多いですね。畑に来た子達に、おじちゃん、芋はどこになっとっと?と質問されますよ(笑)」みんなこの授業を楽しみにしているんです。と、笑顔で語ってくださった。
地元を愛し、地域に根差した取り組みに尽力されている住永氏は、今後も熊本県から人々の暮らしを豊かにしていく。

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